45 後輩書記とセンパイ会計、不乱の刀剣に挑む

後輩書記とセンパイ会計、不乱の刀剣に挑む

後輩書記とセンパイ会計、不乱の刀剣に挑む

 最近流行の刀剣がモチーフの物語たち。流行りだからシリーズに取り入れただけかと思えば、そうではない。それぞれのお話にきちんと納得のいく説明がついているし、ただ取ってつけたような違和感は全くない。流行ワードもきちんと自分のモノにして作品に取り入れる。こういう所が、シリーズ累計頒布数3,000部突破の秘訣なのかもしれない。
 3,000部。その数字に最初は驚くが、作品を読んでいくうちに当初の驚きは納得へと変化を遂げる。「ゆるふわ妖怪小説」というコンセプトのもと紡がれる物語は、とても丁寧でやさしい文章だ。物語に定型、いわゆるお決まりのパターンというのがあり、それをすっかり味方につけている。はじめてでも、何度読んでも、安心感を得られる文章は、素直にすごいと思う。
 今回は世界さんが大活躍だった。そして英淋さんがとてつもなく可愛い。作者本人もあとがきで述べているように、ゆるふわは何処へやら、といった展開だったが。それでもやっぱり根底には「ゆるふわ」があった。それは作品全体に共通する世界観であり、確立したキャラクターたちと、そのキャラクターたちへの作者や読者からの深い愛情で支えられているように思う。
 わたしは栃木県出身なので、日光が舞台の表題作は特に親しみをもって読めた。二荒山神社に刀剣があることすら知らなかったので、今度是非見に行きたい。同じような理由から日光東照宮も巡って、後輩書記シリーズ聖地巡礼を果たそうではないか。ヒロインのふみちゃんファンとしては、彼女と同じような視点で世界を見てみたい。そういった意味でも、実在する場所が出てくるととても嬉しくなる。
 本書には四篇の作品が掲載されているのだが、中でも一番好きだったのはふみちゃんのご両親の馴れ初め話。なんだかんだで、わたしはやはり色恋話が好きなようだ。二人のぶっ飛んだ馴れ初めには「あやさん、主馬さん、さすがです!」と言いたくなる。
 刀剣女子や、妖怪が好きな方、中学生の淡い恋心にほっこりしたい方にもオススメしたい作品。