02 西の魔女が死んだ

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

 繰り返されるサイクルの中でいかに大切なことを見つけられるか。それが、この本に出てくる年老いた素敵な魔女から教わったことだ。
 反復される出来事、言葉、思想。わたしたちは繰り返しの渦の中に生きている。だけどそれは全く同じに繰り返されている訳ではない。その同じように見えて違う部分に気が付いた時、わたしたちは成長という魔法を使えるようになる。まいはおばあちゃんという大好きな魔女のおかげで、少しずつだがその魔法を使えるようになっていた。
 幼い頃、わたしは魔女に憧れて箒にまたがっているような少女だった。けれど、見よう見まねをするだけだった。それで満足してしまっていた。しかし、魔女になる為には真似事をしているだけではいけなかったらしい。そのことに気づいたのはもう少女と呼べる時期をとっくに過ぎた頃だった。
 だから、わたしはまいが羨ましかった。魔女のなり方を教えてくれるおばあちゃんが傍に居てくれるということが、どんなに素晴らしいことか。少女時代にそんな素敵な存在に巡り合えるとは、なんて恵まれているのだろう。
 わたしにはそんな存在が居なかった。いや、居たのかもしれない。けれど、そのことに気づけなかった。わたしは魔女なのだよ、と名乗り出てくれるような親切な魔女はどうやら傍に居なかったらしい。
 でも、わたしが何をしても諦めずに見守ってくれる温かな存在は近くにあったように思う。
 実はそれが魔女が魔女になる為に必要で、人が人として生きる為にも必要で、わたしたちという生命の間にずっと受け継がれていく魔法なのかもしれない。
 おばあちゃんの魔法は、まいにとってかけがえのないものとなったことだろう。特に最後の魔法はまいだけではなく、読者にとっても大切な魔法がかかる瞬間だ。今までの繰り返しが全く新しく生まれ変わる瞬間。その瞬間に立ち会えることが嬉しくて、涙がじんわりと溢れてくる。
 おばあちゃんのくれた温かさを胸に、自分の生き方を考え直したくなる物語だった。