11 ZOO1

ZOO 1 (集英社文庫)

ZOO 1 (集英社文庫)

 読み終えてだいぶ時間が経ってしまったが、感想を綴ろうとすれば今でも鮮明にこの本と出会ったその衝撃を思い出すことが出来る。
 サスペンス、ホラー、SFといったジャンルに分類されるのだろうか。けれども只怖いというだけではない。もちろん、文章から感じ取れる恐怖はこの上ないものだった。ぞくっとする、じわじわと襲い来る、恐怖は読み進めている途中、本を閉じている間もわたしの身体を支配していた。特に「SEVEN ROOMS」の密室ならではの圧迫感や、死を間近に感じている取り乱し方は鳥肌が立つほどだった。そして恐怖をそこまで表現出来るからこそ、見えてくるものもある。
 恐怖の向こう側に見えるのは常に、優しさや希望の光だ。あたたかな涙が溢れそうになることもある。恐怖が齎してくれるものは、時に生きているという今の実感であり、これからの続いていく日々へ立ち向かう勇気であり、切なさである。
 そういった意味では、色々な種類の恐怖を感じることが出来る一冊となっていると言える。「恐怖」を「不思議」と言い換えても良いかもしれない。ひとつの不思議な感情から派生する様々な感情をわたしたちは受け取ることが出来る。人によってその感じ方はそれぞれかもしれない。この本を読んで、何を想うか。じっくりと大切な人と、出来れば静かな雨音の流れるカフェなんかで語り合ってみたい。他の人の感じ方が気になる、感想を言い合いたくなるような本だった。