25 文学少女と死にたがりの道化

 「本を食べる妖怪」である文芸部部長の遠子先輩と元天才美少女覆面作家の男の子が繰り広げる恋愛推理小説ライトノベルらしい表現も多々見受けられるので、そういったものが苦手な人はなかなか読めないかもしれない。
 太宰の「人間失格」をモチーフにした事件が起き、死やトラウマなどと真正面から向きあうシリアスな展開の中でも、ほのぼのとコメディたっちな部分もあるので、気が重すぎになることなく読み終えることが出来た。多少のお色気シーンもあったりとライトノベルならではのサービスシーンもある。多少やりすぎと感じる表現手法などもあったので、そこに違和感を覚える人もいるかもしれない。しかし、登場人物それぞれがきちんとした個性を持っていて、それを利用する形となった事件の顛末はなかなか面白い。
 遠子先輩の本の食後の感想は、本当に美味しそうだ。わたしも本そのものまでもを食べてしまおうとは思わないが、物語が食べ物として形になって出てきてくれないものかとは思う。わたしの書く物語が遠子先輩にはどんな味となって届くのか、一度食べてみてもらいたいものだ。