28 クローバー
- 作者: 島本理生
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/11
- メディア: 単行本
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最初は姉の恋愛模様についてのストーリーなのだが、徐々に弟自身にスポットが当てられていた。特に最終章で重大な決断をする弟は、見ていてとても格好良かった。
弟の決断と、自分の旦那である人の決断が重なって見えてしまい、共鳴した。わたしが結婚したのは旦那がまだ学生のうちだったので、その時もしかしたら旦那もこういうことを考え悩んでいたのかもしれないと思うと、なんだか涙が出そうになった。
自分の進路というものは人生の選択においてかなり重要なウエイトを占める問題なのではないだろうか。わたし自身も進路についてはかなり悩んだ。特にモラトリアムであった専門学校時代から、その後就職するかどうかの進路ではかなり思い悩んで心を病んでしまったくらいだ。
この物語では大学生である弟が、彼女の父親の病気を発端に、就職するか院へ進むかといった選択を迫られる。結局彼は彼の中のベストと思われる答えを出したのだが、それに納得しない人ももしかしたらいるかもしれない。わたしとしては、旦那と似ている境遇の弟の気持ちはとても近く思えてわかったような気分になったのだが、理解出来るからといってそれが最善の選択だったかと言われると正直わからない。ただ、弟はこれからも自分に胸を張って生きていけるだろうし、後悔することはあるかもしれないが、それを過ちだったとは思わないだろう。
人生における取捨選択に、間違いなどきっとないのだろう。人生なんて、迷いだらけだ。でも、それも悪いことではない。後悔することはあっても、いつか過去の自分の選択を優しく包み込めるような大人になれるよう努力するしかないのだ。何があっても前へ前へと進んでいく。ただ、それだけが唯一の救いであるかのように。弟の前向きな決断を温かく見守りたくなる、そんな物語だった。