32 眼球譚
- 作者: ジョルジュバタイユ,Georges Bataille,生田耕作
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2003/05/01
- メディア: 文庫
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シモーヌはまさに天使だと思う。これほどまでに素直で本能に従順な少女をわたしは知らない。一見突飛な言動の数々で、卑猥とも呼べる表現が最後まで続くが、全てはシモーヌの求めているところである。シモーヌは恥じらいを拭い去り、他人の目を完全に無視したところに存在している。まさに自分主義だ。これほどまでに素直だと、多少面は食らうが、なんでも言うことを聞いてあげたくなってしまう気もする。わたしはこうしたい、と思うと同時に行動しているような隠せない素直さは純粋過ぎて、逆に敬遠されてしまうかもしれない。確かに本書を読みながら、複雑な気持ちだった。シモーヌの言動を全て認めて黙って読み進めたい想いと、今すぐに本を閉じて捨ててしまいたい想いとが交錯していた。
最後まで読み通したことで、わたしは少しシモーヌに近づけたのだろうか、と思う。素直な少女は見ていて気持ちが良い。願わくば、シモーヌの恍惚に満ちた笑顔がありますように。