38 ビブリア古書堂の事件手帖2 〜栞子さんと謎めく日常〜

 去年の10月に書いたブログで紹介した文庫本の第二巻。わたしの読書熱を再沸騰させてくれ、本屋大賞ノミネート作品にもなった第一巻の感想文はこちら
 相変わらず本に対する情熱と謎に溢れている小説だった。前巻と少し違っていたのは、ストーリーの流れが出来たことだろうか。前巻はひとつひとつをそれぞれ取り上げただけでも充分に楽しめる内容だったが、第二巻は全体の流れが物語の中心にあって、そこに本にまつわる謎解きが付随している、といったような印象を受けた。よって、謎解き部分のインパクトは弱まってしまった気はする。けれどその分、読者を惹き込むストーリー展開で魅せているようだった。栞子さんと主人公の関係が縮まっていく様子や、栞子さんとお母さんの確執など、見所は多い。わたしは謎解きより、そういったキャラクターに着目した部分に目が行ってしまった。
 そして、前巻と比べてばかりになるのもあれだが、今回は前巻よりも如実に漫画的要素が使われていたように思う。ライトノベル的とでも言うか。確かに読みやすいのだが、わたしは第一巻のテイストの方が好きだった。ただ、ライトな読者層にはぴったりかもしれない。小説を読むのが苦手な人でも、すんなりと読み進められるような作りになっていると思う。
 実在する地名が出てきたりと妙にリアリティがありつつも、登場人物や古本屋はまるっきりの架空だと宣言する作者。あとがきで綴られているこういった小説の作り方はとても共感出来た。実在する世界にフィクションを含ませることで、小説は力を持つ。全部本当だったらそれは小説ではなくなってしまうだろうし、全部嘘というのもわたしとしては物足りない。適度な現実感と、巧みな虚構から成り立つものが小説なのだと思っている。そのバランスがとても上手くいっているのが本書なのではないだろうか。ビブリア古書堂ひとつにしても、本当に北鎌倉にこういうお店がありそうだな、と思わせるのが上手い。また、北鎌倉という立地を選んだこともどことなく小説的な空気を感じさせる。そういった小説の周囲を固める描写や設定が、非常に上手い作品だと言えるだろう。
 今後もまだ作品は続く。続きが実に気になる風に終わっている今作は、これだけでは物足りないが、続きを期待せずにはいられない作品となっている。第三巻は近々発売とのことらしいので、そちらの方にも期待を寄せつつ、本の魅力を何度でも教えてくれる本シリーズと出会えたことを何よりも喜びたいと思う。